2022スプリンターズS 堅実になったメイケイエール。

2022スプリンターズSの考察。
土曜日は2勝クラスの勝浦特別の勝ち時計が1.07.7。3勝クラスの秋風Sの勝ち時計が1.33.3。馬場状態はまずまずといったところで、GⅠスプリンターズSといえども今年も驚異的な時計にまではならないと見込まれる。

メイケイエール
前年のスプリンターズSの頃は暴走の問題が付きまとっていたが、今年に入り気性の成長があったのか、優等生的なレース運びで堅実に成績をあげられるようになった。高いポテンシャルをもつ馬がいよいよ軌道に乗ってきた感じで、暴走による自滅癖はもう忘れてもよいかと思われる。
前走はセントウルSで0.4秒差の圧勝。1.06.2と驚異的な時計となったが、メイケイエール自身は幅広い時計での好走実績があり、能力、充実度の証明と捉えられる。前年のスプリンターズSにしても、前述の問題を抱えつつも4着に健闘していることから、初のGⅠ制覇に向けて機は熟したという雰囲気も感じられる。
少し気になるのは軌道に乗ってきてから使っているのがいずれも左回りのレースであること。もともと右回りが苦手ということはないはずだが、左回りの方が実は得意だとすると、前走あたりよりパフォーマンスを落とすおそれはある。ただ、軌道に乗ってきた時期と左回りを使った時期がたまたま重なった、というだけの可能性も十分にあるし、仮に右回りでパフォーマンスを落とす部分があったとしても、大きく落とすには至らないと見込まれる。
ローテーション的には最近では久しぶりに間隔を詰めて使うことになる。セントウルSからの参戦は一般的には問題なく、実際にこのローテーションで好走した事例は多くあるが、メイケイエールに関して結果を残してきた使い方からの変化という点で、人気を考えると多少の不安はあるかもしれない。とはいえ、デビュー当初でさえ、詰めたローテーションで好走したこともあるので、重大な問題ではなさそうか。

ナムラクレア
前々走の函館スプリントSでは斤量に恵まれたところもあったが0.4秒差の圧勝。桜花賞3着の実績ももつ馬ではあるが、1200mでよりよさが出たという印象。
一方で前走の北九州記念では好走はしたが3着止まり。ただし、レースぶりは見るからにスムーズでなく、最後はよく伸びて3着を確保したという感じでもあり、クラスは上がるが巻き返しの余地は十分にあると思われる。3歳牝馬の事例では、やはり位置取りのまずさで北九州記念を勝ち切れなかったエピセアロームが本番のスプリンターズSで4着に好走したこともある。
とはいえ北九州記念を勝ち切れなかったのは事実。もし同じようなことが起きたら、と考えると、人気を加味すると全幅の信頼は難しいかもしれない。

シュネルマイスター
現時点で3人気だが、単勝オッズは思っていたより上と離れているという印象。当日になってどう変わるかだが、一因としてNHKマイルC、安田記念でシュネルマイスターと互角に戦ったソングラインがセントウルSで5着に敗れたことがあるのではないだろうか。
ソングラインにとって1200mは短かったとのコメントもレース後に出ており、似たような経歴をもつシュネルマイスターにおいても同様の不安があってのオッズなのだと思われる。実際にシュネルマイスターも1200mの経験はなく、確かにこなせるかは未知で、やってみたらダメだったという帰結はありうる。
一方、セントウルSでは勝ったメイケイエールの時計が1.06.2とやたらと速く、ソングラインも1.06.9で入線している。シュネルマイスターにとって1200mが忙しい疑いがあることを前提としつつも、スプリンターズSでは馬場状態を考えるに、セントウルSほどの時計となる可能性は低く、時計によってはシュネルマイスターが適応できる可能性も相対的に上がってくるのではないかと思われる。


 

テイエムスパーダ
CBC賞では1.05.8という考えられないような時計で勝ったが、前走の北九州記念では後続に捕まって7着。逃げながら直線で意図的に外に出す選択をしており、スムーズでなかったのかもしれないが、ナムラクレアのようにあからさまにスムーズさを欠いたわけではない。また斤量に関しても、ナムラクレアは53kで変化ないが、テイエムスパーダは51kから53kに増える。時計的にもCBC賞よりは北九州記念寄りの時計となる公算で、テイエムスパーダにとって前走より好転する要素は見つけづらそう。
今回は最内枠を引いたので、思い切って逃げて単騎の逃げが叶えば、前走以上の能力が発揮されて残り目が出てくる感じだろうか。

ナランフレグ
春の高松宮記念を勝利。スプリンターズSで春秋スプリントGⅠ制覇を目指す。前走の安田記念では9着だが1600mということで気にする必要はない。
ナランフレグは後方一気という作戦をとる馬で、高松宮記念でもやはり後方から。内有利の馬場だったため、内枠から思い切って内を突いた作戦が嵌り勝つことができた。
スプリンターズSに向けては、再度この末脚を発揮できるかが問題となる。高松宮記念では勝ち時計が1.08.3に留まったことで、後方で溜めていても間に合ったというのが1つの解釈となる。
スプリンターズSでは前半から流れることも想定されるため、そこで脚を削られないかが懸念点となる。すなわち、速い時計となった場合は、上がりで他馬を圧倒できないパターンが想定される。その点では、シュネルマイスターと同様に、極端に速い馬場でなさそうなことはナランフレグにとってプラスかもしれない。とはいえ、さすがに高松宮記念の時計は上回らなければならないことになりそう。どこまでの時計なら適応できるのかというのがポイントとなるか。
なお、ナランフレグにおいては実際に結果を出しているので該当しないかもしれないが、普通に考えればこうした脚質の馬はアテにしづらいところがある。

ウインマーベル
古馬初対戦となった前走のキーンランドCでは2着に好走。スプリンターズSに向けては、できれば勝っていた方が期待しやすかったが、3歳馬ではシュウジやソルヴェイグのように、キーンランドCで勝てていなくてもスプリンターズSで頑張った馬もいる。そこまで人気がなければ、3歳馬の成長力に期待してみる手もあってよいか。
ウインマーベルは持ち時計に欠けるところがあり、キーンランドCにしても自身の走破時計は1.09.2。イメージ的にも時計のかかる決着に合いそうな感じで、中山の下り坂スタートに適応できるか、それなりの時計に適応できるか、といった点が問題となる。ただし、このあたりは経験に欠けるだけに不透明。1400mだが橘Sで一応1.19.3で勝った実績もあり、意外と合っていたりしたら浮上の余地はある。

 

ヴェントヴォーチェ
スプリンターズSと同じ中山1200mの春雷Sでの圧勝が印象的。このときの勝ち時計が1.06.8と速かっただけに、高速馬場がこの馬のよさを引き出す舞台かと思っていたら、前走のキーンランドCでは1.09.1で重賞初制覇。キーンランドCは各馬が外に出す中で空いた内めをついた騎乗も光ったが、重めの芝をこなす適性がなければ成立しなかったと思われる。
振り返れば確かに幅広い時計での好走実績があり、現状のベストパフォーマンスは一応は春雷Sとしつつも、必ずしも時計は問わないタイプという扱いとなる。
ポイントは決着時計そのものというより序盤のペースにあるのかもしれない。すなわち、キーンランドCでは出足の遅さもあってか後方で溜める形となっていたし、春雷Sではコース形状の割に自身のラップ構成は後傾となっている。そう解釈すると、函館スプリントS7着後の「ペースが速くて、ついていくのでいっぱい」とのコメントも合点がいくか。
スプリンターズSにおいては、ナランフレグと類似で、前半で脚を削られないか否かが問題となるだろうか。ヴェントヴォーチェの場合は時計が速くなっても対応できる下地はあるだけに乗り方も関係してきそう。騎乗実績があるのはよいが前走よりは鞍上弱化ではある。

ダイアトニック
2年前の高松宮記念で3着で好走し、函館スプリントSでは58kを背負いながら1.07.5で完勝した実績をもつ。その後故障もあったが、今年の阪急杯では1.19.9と速い時計で勝利し、まだやれるところを示した。
しかし、その後の高松宮記念、安田記念ではともに14着。安田記念に関しては、もともと1600mもこなせるといった程度の適性だったと思われるので気にしなくてよい。他方で、高松宮記念では出遅れもあったが、それにしても伸びあぐね期待外れだった感もある。1つの考え方としてはもうGⅠレベルで期待するのは難しくなってきているというものがある。
ただ、人気もないので1戦全然ダメだっただけなら、まだ見限らないという手もあるかもしれない。動画を観たが高松宮記念では返し馬時に野次を受けており、その影響があったともされている。
今回ダイアトニックは内めの枠を引いた。スプリンターズSでは内の馬が上手く立ち回って上位に進出してくることがある。前年でいえばシヴァージが該当する。人気は大きく落としているので、仮にダイアトニックがいい頃の出来には及ばないとしても、立ち回り次第で通用する程度の能力を残していれば、鞍上の性質込みでインからの浮上に期待してみるのもありかもしれない。

トゥラヴェスーラ
春の高松宮記念では最終的に本命にした馬だが、レース中に鼻出血があり4着。鼻出血が結果にどの程度の影響を与えたか知る術がないが、それさえなければ、と思わずにはいられない。
高松宮記念では2年続けて4着に好走しているが、勝ち時計は1.09.2、1.08.3。スプリンターズSではこれよりは速い時計が想定されるため、対応できるかが課題となる。
時計に対応できるかは、不安要素の方が大きいかという印象もあるが、同時に不確定要素でもある。人気がないだけに克服を期待してもよい。
一方でローテーションは高松宮記念以来となり、やはり順調に使えていない感が大きく状態面が疑わしい。
トータル的に高松宮記念のときよりも高い評価を与える理由は見出しづらいが、当時よりどれだけ人気を落とすかとの兼ね合いも考えたい。

ファストフォース
今年に入り不振が続いていたが、前走のセントウルSでは2着に好走。逃げ候補の1頭であり、仮に復調していて、かつ、単騎逃げの形にでもなれば、少しは好走の可能性も出てくるだろうか。ただ、前走にしても終始追っている感じで、前の位置をとれるかというところに課題は残りそう。
また、前走は確かに2着ではあったが、メイケイエールとは実力の違いを感じさせるもの。メイケイエールを本命にしない場合はファストフォースも重視しないという運用になるだろうか。まあメイケイエールが自滅癖を再発させるようなことがあれば話は変わってくるが。