2022オールカマー 故障からの復活を期す馬が多数参戦。

2022オールカマーの考察。
前日の天候不順で土曜日は重馬場での開催だったが、オールカマー当日は晴れる予報。よくも悪くも極端な状態にはならなそうか。
オールカマーのメンバーを見渡すと、故障で長期休養を余儀なくされた経験をもつ馬が多くいる印象。デアリングタクトとヴェルトライゼンデは1年以上の休養から復帰して、まだそれほど経っていない。ソーヴァリアントは前年のチャレンジC以来9ヵ月ぶりの出走。バビットは1年7ヶ月ぶり。クリスタルブラックに至ってはコントレイルが勝った皐月賞以来2年5ヶ月ぶりの出走となる。いずれも復活を期すところとなる。

デアリングタクト
長期休養からの復帰2戦目となった前走の宝塚記念では3着に好走。さすがなところを見せたが2年前のインパクトには及ばない感じで、今後の牡馬混合GⅠで期待を寄せられるようになるには、もう一段復活が必要となる印象。
しかし、今回はGⅠではなくGⅡ。前走と同程度走れれば十分に好走可能と思われる。中山は初めてとなるが、3冠馬とあって幅広い適性をもっており、ピンポイントで苦にする可能性は低いであろう。
不安があるとすると適性よりやはり状態面。大きな故障を発症した経緯があるだけに前走に近い状態が維持できているかどうか。
ちょうど秋場所が開催されているが横綱の照ノ富士が休場。手術となれば長期離脱となる模様。膝に大きな故障を発症し序二段まで陥落しながら、幕内に戻って大関に戻って横綱にまで上り詰めたのは、まさに奇跡の復活といってもいいレベル。昔は正直嫌いだったが、それを覆してしまうほど強烈な印象を残すものだった。しかし今年に入ってから今場所までの様子を見ると、やはりいい状態を長くは維持できなかったようである。現役だと栃ノ心も大きな故障を経験しながらも大関に昇進したが、あっさりと陥落してしまった。貴乃花と稀勢の里も長期休場から一旦は立て直したかに思えたが、その後は再度不振で程なくして引退している。
話が逸れてしまったが、大きな故障を経験した馬に関しては、復帰できるか、あるいは復帰戦や復帰2戦目で買えるかどうかという話が中心で、復帰後の競走生活一連の流れについての話を聞くことが少ないように思える。馬自身が状態についてコメントすることはないからだろうか?痛々しいサポーターをつけて出走してくるはずもなく視覚的に気にならないからだろうか?目の前のレースの予想が重要で長期的な展望の意味が薄いからだろうか?馬券においては3つ目が重要という気はするが、馬においても再発のリスクも含め、人間と同様にいい状態を維持できる期間が短くなりがちなのではないかと思っている。そうはいっても確かにどのタイミングでとなると言い当てるのは難しく、馬体や返し馬から状態を見抜くことのできない人間の限界を感じさせられる分野ではある。前述のようにデアリングタクトの能力、適性であれば、このオールカマーで結果を出せる期待は十分にあり、無印にするなどは無謀といえる。ただし、人気を背負う馬だけに、大局的な観点から状態面の衰退の可能性を1つのリスクとしてあげておきたい。

ヴェルトライゼンデ
長期休養からの復帰戦となった前走の鳴尾記念ではいきなり勝利。近年はこのような事例が増えているように思え、休養明けの扱いについての考え方を見直す必要性をあらためて感じさせられるものだった。
ヴェルトライゼンデはもともと能力は十分にあり、クラシックでの活躍に加え、オールカマーと同じコースで行われるAJCCでも2着に好走している。状態面が順調であれば、ここでも当然に通用する下地はある。
この馬もデアリングタクトと同様で、いい状態を維持したままレースに臨めるかが1つの漠然とした不安となる。鳴尾記念の後、勝った勢いで宝塚記念に向かったりせず、このオールカマーに照準を合わせてきたあたりは、大事に調整してきたという好感をもてる反面、それだけ慎重に扱わないといけない事情があるという解釈もできる。どちらともいえないところ。
鳴尾記念の勝ち馬でいうと、パフォーマプロミスが長期休養からの復帰戦として出走して勝利。ラヴズオンリーユーを降す見事な勝利だったが、次走として秋の京都大賞典を選ぶも6着まで。ダイヤモンドSでまた故障して引退となった。今回のヴェルトライゼンデはローテーション的にはパフォーマプロミスに近いと思われる。パフォーマプロミスはヴェルトライゼンデとは年齢が異なるし、かねてから体質的な弱さを抱えていた馬だったので、これよりはいい結果を期待しやすいが、仮に順調にきていた場合ほどの信頼は置きづらいか。

ソーヴァリアント
この馬も長期休養からの復帰戦となるが、その割には人気を集めているというのが第一印象。
とはいえ振り返ると確かに前走のチャレンジCにおいては2着に0.6秒差をつける圧勝。この内容であればGⅡでも通用してよいと思われる。中山2200mに関してもセントライト記念2着好走があり適性面も申し分ない。
ソーヴァリアントも故障というのがキーワードとなるが、他の馬の期間と比べると深刻度は低いかもしれない。前述のヴェルトライゼンデを含め、近年は休養明け初戦から好走できる事例が増えており、あるいはソーヴァリアントがそれに該当してくることも考えられるが克服できるかどうか。従来的な考え方としてレース勘や息保ちの問題もやはり気になるところではあるし、故障の経験が馬のメンタルに悪影響を与えることもありうる。折り合い面に関して内枠を引いたことはプラスと思われる。

テーオーロイヤル
条件クラスから4連勝でダイヤモンドSを勝利。勝ち方も2着に0.4秒差をつける完勝だったが、その能力をあらためて示すようにGⅠ天皇賞春でも3着に健闘した。タイトルホルダーにこそ完敗だったが、それでもGⅡであれば格上ではないかと感じさせるパフォーマンスだったと思われる。まだ4歳で近走で強い相手と戦った経験が、さらなる成長を促すかもしれない。
天皇賞春以来の休養明けではあるが、これだけのスタミナがある馬で、小回りの2200mであれば、それほど問題とはならないかと思える。
テーオーロイヤルの最大の不安点は単純に距離短縮にあると思われる。1600mでデビューした馬だったが、距離を延ばすことで躍進してきただけに、前走より1000m短くなる2200mに現状で適応できるかどうかが課題となりそう。

 

ジェラルディーナ
鳴尾記念2着から臨んだ前走の小倉記念では着順こそ3着だったが、あまり見所のある内容ではなかった。位置取りも窮屈に見え、後手後手になって伸びあぐねて、なんとか3着という感じ。
一方で、ジェラルディーナはスローのラップで結果を残してきた馬であり、小倉記念では結果的にマリアエレーナのスピードに屈したという印象もある。その点では2200mへの距離延長はプラスに働く期待ももてる。2200mでは京都記念で4着に好走した実績もある。
前走での位置取りもあり、器用に立ち回ってこれる印象は薄いので、中山コースにおける内枠はどうかというところもあるが、頭数が13頭に留まっているのはジェラルディーナにとっては幸いかもしれない。

ウインキートス
前年のオールカマーで2着に好走。前年から1k斤量が減って54kとなる。
前年好走したことに関しては評価でき注意が必要となるが、ウインキートスはこのクラスで好走するには能力的にギリギリのラインにあるという気もする。確かに前年の目黒記念を勝っているが、自身の使った上がりが32.5であったように、オールカマーのようなレースには直結させづらい。
前年のオールカマーでは、ウインマリリンが抜けた後、混戦の2着争いを制したという印象もある。前走の目黒記念でもリピーターとして能力を発揮し3着に好走したが、後続馬への優位性はそれほどのものでもない。
日経賞や札幌記念での惨敗も、レース中の不利や適性の問題ももちろんあるが、少し噛み合わないと、そうなってしまうくらいの能力という見方もできる。
したがって、ウインキートスに関しては、展開を味方につけられるかといった点、または有力馬が何頭凡走してくれるかといった点との衡量の問題となるのではないか。

ロバートソンキー
前走3勝クラスを勝利しオールカマーへの挑戦となる。前走は勝ち方としてもまずまずのものではあったがオールカマーはGⅡ。飛び級ということになり、前走でのパフォーマンスだけで、直ちにここに通用するとはならない。
ただし、ロバートソンキーは3歳時にポテンシャルを垣間見せている。すなわち、神戸新聞杯においてヴェルトライゼンデと着差なしの3着に好走。ついでにディープボンドに先着している。菊花賞でもコントレイルやアリストテレスの遥か後方での攻防ではあるが、7着だったヴェルトライゼンデに先着して6着に入線。これらの経緯からヴェルトライゼンデが好走できるなら、ロバートソンキーもなんとかなってよいのではないかという考え方もとりうる。
確かに実績の額面では劣るが、一応は順調に勝ち進んできた部類とはいえる。前走だけ見れば厳しくても、昇級は形だけで意外と格負けしないというパターンもありうる。
なお、ロバートソンキーは実績がやや左回り寄りという印象がある。少し気にはなるが顕著なものではなく、そこそこの人気であれば神経質になるべきものではないかと思われる。

キングオブドラゴン
オープンに上がってからは阪神大賞典6着、鳴尾記念5着。悪くはないが、やはり少し足りないという印象は否めない。
ただし、それぞれ次のような言い訳は可能ではある。阪神大賞典は3000mの距離が長かった。鳴尾記念では内容的にイマイチも1.57.7の勝ち時計に対応できなかった。とすると間の2200mの距離に前進を期待するという手はあってよい。
とはいえ実績に欠けるのは事実なので他に後押し材料がほしいところ。脚質的にキングオブドラゴンが逃げることも想定されるため、ノーマークで逃げられるようであれば期待も増してくるか。それだけに特にバビットの出方が気になるところだが、鞍上が横山典騎手なだけにどういう乗り方をしてくるか不透明性が強く、それに伴いキングオブドラゴンへの期待のかけ方の塩梅も難しいところとなる。