記憶に残る皐月賞 2012ゴールドシップ

今週末は皐月賞が行われます。まだまだ将来の分からない若駒の戦いとなりますが、これまで行われた皐月賞の中でも特に印象の強い年度の話を書こうと思います。

取り上げるのは2012年。ゴールドシップがワープしたレースと言えば伝わりやすいだろうか。

この年の中山開催はやたらと雨に祟られることが多く、それに伴い馬場の損傷が激しかった。皐月賞の日は目に見えて内側が悪く、外を回すのが定石と考えられる状態だった。

このレースではゴールドシップを本命にした。レース中は当然中心に見ることになり、その目線から書きたいと思う。
本命にした理由は、正確には覚えていないが、総合的に考えて、おそらく最も凡走する確率が低そう、馬券圏内に来る確率が高そう、といった程度の理由だったと思う。後々の癖馬っぷりからは想像しづらい話だが、この時点では理に適った堅実な成績でマイナス評価となる負け方がなかった。

 

レーススタート。
エンジンのかかりの遅さもあり道中は最後方の位置取り。さすがに後ろすぎるとは思ったが、とはいえ、これ自体は全くの想定外というほどではない。

問題はオレンジ帽だったにも関わらず、内を進んで差を詰めようとしていたことである。
ゴールドシップの代名詞ともなった捲りだが、ラジオNIKKEI杯2歳Sの時点でかなりの進出を見せており、皐月賞では途中まで後方にいたとしても、外から捲ることで馬場を味方に好走できるのではないか、と踏んでいた。
しかし思ったのとは異なる挙動が展開されようとしていた。

スタート後最初の直線で落馬寸前の場面のあったワールドエースは、位置取りとしては同じく後方だったが、外目に出しており、こちらの方が適切なレース運びに見えた。
さらに言えば、先行していたディープブリランテ、コスモオオゾラあたりはコースを選びながら、より理想的なレース運びをしていたように見えた。

一方でゴールドシップは荒れた内を進んでいく。
外差し馬場において、意図的に内を突くのは、最内1頭分だけ馬場が生きていて、そこを狙うというパターンと、既に脚が残っていない馬がイチかバチかで突っ込むというパターンが思い浮かぶ。
ゴールドシップはどちらのパターンでもない。鞍上の手が激しく動いている割に馬に余力があることは分かったが、これは奇襲に見せた騎乗ミスで最終的には止まるだろうな、と半分諦め状態になった。

しかし思ったよりも進出の勢いがあり止まりそうな気配がない。コーナーでは1頭だけ内を回っているような構図となったが、ショートカットする形で一気に順位を上げる。これが所謂ワープだが、不安には思いつつも希望も出てきたという状態。
直線では先頭に立つ。外に持ち出しながら脚色は衰えず、後続に対してセーフティリードを保ってゴール。
1分にも満たない間に、諦めから始まり不安、希望、余裕と、忙しく感情が変わりながらの馬券的中となった。

 

結果的にゴールドシップは勝ったわけだが、やはり定石的な騎乗ではなかったと思える。もしあれで惨敗していたら内田騎手は非難されたと思う。というかしていたと思う。
ただ、結果から言えることとしては、皐月賞のゴールドシップにおいては、あの乗り方が正解になったということ。検証不能な想像にすぎないが、仮に同じく後方にいたワールドエースが内を突いていたら、おそらく2着もなかったのではないかと思う。
馬券を買う側は馬の適性を検討するが、乗る側もレースの中で馬の適性を生かせるコース取りを考えながら乗っていることがよく伝わる事例といえるかもしれない。ゴールドシップの道悪適性なら、外を回すコースロスの不利益よりも、荒れた馬場で体力を削られる不利益の方が小さかったということか。それでも定石を覆す乗り方を実行できる度胸もすごかったと思う。
また、後から振り返れば、この皐月賞はゴールドシップの伝説の始まり的なレースでもあった気がする。

最後までお読みいただきどうもありがとうございました。