2022ヴィクトリアマイル 左回りなら安定感あるソングライン。

2022ヴィクトリアマイルの考察。
今年は役者が揃ったという印象。雨の影響で馬場が悪くなる可能性も考えられたが、土曜日の時点でも回復がみられ、京王杯SCは1.20.2で決着。上がり最速は33.2が出ている。日曜日はさらに回復が見込め、馬場のいい状態でヴィクトリアマイルを迎えることができそう。

デアリングタクト
故障で休養していた3冠牝馬の復帰戦となる。
地力の高さは言うまでもないが、さすがに休養期間が長く、どういう状態で出てくるかが問題となる。かつて3冠を期待されたレーヴディソールもポテンシャル溢れる馬だったが、故障してしまい、復帰後は以前のパフォーマンスを取り戻すことはできなかった。デアリングタクトの休養期間はこれをはるかに上回るものであり、いきなり能力を発揮するのは難しいのではないかという感じがある。シャケトラのように長期休養からの初戦で勝つ馬もいるが、それはそれで負担がかかりそう。まずは無事に回ってきてほしいところでもある。
なお、状態面とは別に適性面に関しても今回のヴィクトリアマイルでは不安を残す。デアリングタクトはアーモンドアイ、コントレイルに食い下がったジャパンカップにみられるように、おそらく中距離に最も適性がある。確かに桜花賞も勝っているが、このときは重馬場で勝ち時計も1.36.1と遅いものだった。ヴィクトリアマイルにおいてはスピードに適応できるかの課題が生じる。

ソダシ
阪神JF、桜花賞を制しており、1600mに高い適性を示す。東京コースも問題なく、先行から押し切るパターンも期待できる。イメージ的にはホエールキャプチャが勝ったときの感じだろうか。
かつて4歳アパパネvs5歳ブエナビスタという構図でアパパネに軍配が上がったが、今年でいえば4歳ソダシvs5歳デアリングタクトといったところか。相手の順調さを考えると、あのときのアパパネ以上にソダシに勝算が見込める。
もっともソダシ自身も完全に順調と言い切れない部分もある。気になるのはローテーションで、近2走はダートを使っている。そのため、芝のレースとなると秋華賞以来で、半年以上ぶりということになる。慣れという面で不安が残るが、前走のフェブラリーSは重馬場でダートの中では芝寄りのレースとなった。入りは34.5でソダシはこの流れの中で先行している。久々の芝レースに対する不安を軽減する材料ではある。

ソングライン
前年のNHKマイルCにおいてシュネルマイスターと接戦の2着。3着は0.5秒離れており強い内容だったと思われる。秋には富士Sを勝利。芝が軽い方がよりよさそうという印象もあるが、好走しているときの時計に幅があり、1600mの距離において高い能力をもっていることを感じさせる。
一方、ソングラインには安定感の不安もある。桜花賞15着、阪神C15着と派手に負けることがある。桜花賞はメイケイエールに妨害されたとのコメントも出ていたが、阪神Cの敗因は不明。考えられるのは右回りが合わないということだろうか。惨敗2つはともに右回りであり、同時にソングラインのキャリアにおける右回りはこの2戦のみ。他7戦はすべて左回りを使っておりすべて3着以内と安定感を発揮している。ヴィクトリアマイルの東京は左回りであるため、仮に回りの問題で安定感を欠いているように見えるだけであれば気にする必要はないことになるが。

レシステンシア
近走は1200mを中心に使っており、前年のヴィクトリアマイル以来の1600m出走となる。阪神JF1着、桜花賞2着、NHKマイルC2着ともともとはこの距離でも結果を出しており、こなすことができる下地はもっている。
かつては完全に逃げ先行馬だったが、1200mを使う中で脚質の幅を広げ、場合によっては差して結果を残すこともできるようになっている。そのため、今回どういう位置取りになるか分からないが、ある程度控えるパターンも想定される。ただ、1200mではうまくいっていても1600mで控えて持ち味を出せるかは疑問もある。我慢する区間が異なるためである。阪神JF、桜花賞に比べてチューリップ賞でパフォーマンスを落としていたように、以前は変に抑えると持ち味が出ないところがあった。他方で肉を切らせて骨を断つようにラップを刻んで押し切る作戦にはギャンブル性も出てきてしまう。どういう乗り方をするかに注目。
もう1つ気になる点としては、前走の高松宮記念がこの馬としてはやや淡泊な内容だったこと。休養明けでプラス18kが堪えたと解釈することはもちろん可能だが、レシステンシアは2歳から活躍している5歳馬。近い成績、近い路線の馬としてレッツゴードンキがあげられ、活躍期間も長かったことから、レシステンシアもまだまだ活躍できる馬と思うが、年間ベースでは多少成績を落とし始める時期に入りつつあるおそれもある。

レイパパレ
前年は大阪杯の後、宝塚記念に出走したが、今年はヴィクトリアマイルに出走してきた。
レイパパレの主な実績は2000mであり、1600mの速い時計に対応できるかに関しては未知である。また、機動力を生かして実績をあげている感じがあるので、仮にスローからの上がり勝負になった場合に東京の長い直線の仕掛けのタイミングに適合するかも不透明である。
一方で、レイパパレは最大実績から2000mがベストという印象が確かにあるが、チャレンジCを勝った頃に時を戻すと、実は1800mや1600mがベストで2000mもこなせる、といった適性である可能性も考えられる。距離短縮がプラスに働く可能性も考えられ、前走の大阪杯でも2着に入るなどの実績を加味すると、有力な1頭となりうる。レイパパレも近走で脚質の幅を広げており、控えても結果を残せるようになっている。今回も逃げる可能性は低そうだが、距離短縮の中でのものなので折り合い面での不安は小さい。

 

ファインルージュ
前年の桜花賞ではソダシに0.1秒差の3着。秋には秋華賞でも2着に入っており、4歳世代において上位の1頭である。
とはいえ、前走の東京新聞杯でも2着に好走したものの勝ったイルーシヴパンサーに0.3秒差をつけられており、ワンパンチ足りない雰囲気も感じさせる。能力、適性ともここで通用してよいだけのものはもっていると思われるので、少し足りない部分をルメール騎手がどう埋めるか。

アカイイト
前年のエリザベス女王杯を勝利しており、格としてはここでも上位に入る。しかしアカイイトは2000mでも少し短いかもしれない馬。1600mの距離がやはり課題となる。前走の大阪杯と比較すると、格の面ではプラスになり適性の面ではマイナスになる感じだろうか。ジャパンカップを勝ったショウナンパンドラくらいになると適性のズレを覆して好走できたりするが、アカイイトはそこまででないと思われる。クロコスミアのような事例もあるにはあるが。

テルツェット
前年はダービー卿CTを勝ってヴィクトリアマイルに挑戦したが、本番では3人気に支持されたもののいいところなく14着に終わった。
速い時計に適応できなかった可能性もあるが、前年のヴィクトリアマイルにおいてはそもそもローテーションに不安があった。すなわち、テルツェットは間隔を空けてレースを使ってきていたところ、このときだけは割と詰めて使ってきていたためである。ダービー卿CTを勝ったことで欲が出たのか真偽のほどは分からないが、いい状態でヴィクトリアマイルに出走できなかった可能性がある。仮にそうだとすると、前年より人気を落としそうなこともあり、前年の惨敗をノーカウントとする手はあってよい。
今年は従来通り余裕をもったローテーションでの参戦となり、前走は中山牝馬Sで5着も上がり最速で差を詰めた。中山牝馬Sでは斤量56.5kを背負わされており、そうした中での結果としては一定の評価を与えることができる。ヴィクトリアマイルでは斤量も減るし鞍上も強化され、前走からの上積みがあると考えられる。
テルツェットは前走を含め位置取りが後ろになるきらいがあり、大外枠を引いてしまったこともあり、結局スピード勝負についていけなかったという帰結もありうるが、楽しみのある1頭でもある。

メイショウミモザ
長らく1200mを使っていたが、前走の阪神牝馬Sで1600mを使ったところ人気薄ながら勝利し重賞制覇となった。血統的な観点からは、これまで1200mばかり使っていたのが不思議なくらいだが距離延長が功を奏した感じか。
阪神牝馬Sの勝ち方としては強調材料はないが、1600mでは実質底を見せていないという解釈も可能で、前走を経験した慣れも見込める。メイショウミモザは例年の阪神牝馬Sの勝ち馬に比べて人気がない。今年はそれだけ役者が揃ったともいえるが、人気とのバランスの面からはこの馬にも面白さはあるかもしれない。

アブレイズ
2走前に中山牝馬Sにおいて56kを背負いながら2着。類似コースだった前走の福島牝馬Sでは9着で安定感に欠けるが、中山牝馬Sだけ走れば可能性も生じうる。1600mの適性も未知であり、克服すべき課題も多いが人気のなさを考えると多少の怖さはあるか。

シャドウディーヴァ
府中牝馬Sを勝った後、ジャパンカップ、有馬記念、金鯱賞と挑戦するも通用せず。牝馬限定戦に戻ってきて、ここなら通用するのかが問題となる。
シャドウディーヴァは安定感に欠けるが、1600mでいうと東京新聞杯の好走などもあり、ファインルージュあたりと比べてもそれほど劣っていない可能性も考えられる。とはいえ、東京新聞杯2着時は勝ち時計が1.33.0。前年の府中牝馬Sも強い内容ではあったが、上がり勝負の様相だった。前半から流れて速い時計になると適応できない可能性があり、そうしたところが近走のレース選択につながっていたのかもしれない。