今週は日経新春杯が行われます。今春に京都競馬場がリニューアルオープンということで、日経新春杯も来年は京都に戻る見込み。馬券とは関係ないが、これまでの中で最も印象に残った日経新春杯の話でも書こうかと。
取り上げるのは2009年のテイエムプリキュア。
デビューから3連勝で阪神JFを制するもその後は低迷。3年間で馬券圏内も1回のみで二桁着順を繰り返すという成績。簡単にまとめると走らなくなった馬で、日経新春杯が引退レースとなる予定だった。
しかし逃げの手に出たテイエムプリキュアは直線に入っても脚色衰えず、後続を完封して引退レースにして久々の勝利。
見事な逃げ切り勝ちだったが、このときの岡安アナウンサーの実況がまたよかったように思う。地上波の実況は必ずしも好きなものばかりではないが、実況が感動的だったこともレースが記憶に残った一因だったのではないかと。
「さあ前はいる!黄色い帽子ここにいました。先頭はテイエムプリキュアだ!さあラストランを飾れるか!」
「外側からアドマイヤモナーク追い込んで来る!しかしながらテイエムプリキュアだ!3年間の苦労が報われるぞー!」
「一人旅だ一人旅だテイエムプリキュアだ!外側からアドマイヤモナーク追い込んで来る!さらにはナムラマース、ホワイトピルグリム!しかし逃げ切りだ!テイエムプリキュアようやく勝ったー!」
「苦しかった3年間報われました!ハッピーエンドです、テイエムプリキュア!」
「見事に悩めるGⅠ馬2歳女王が復活!」
好きで何回も聴いたのでいくらか覚えてしまった。実況は来る馬を想定して予め作っていることがあると聞くが、これなんかテイエムプリキュアが勝つことを前提に作ってあったようにも思えてくる。特に「3年間の苦労が報われるぞー!」の一体化感がいい。
馬券は2着ナムラマースの複勝をとれただけだったが、儲け云々とは別に純粋に拍手を送りたくなるレースだった。
勝利を伝える記事にはその性質上か"復活"という文字が躍った。ただ、阪神JFを勝った頃とは別馬感がある。当時周囲が思い描いていた未来とはきっと違うので、これを"復活"と呼んでよいのかは分からない。同じ2歳王者でもアドマイヤコジーンとは異なる。
一方でたとえかつて想像していた未来を掴むことが叶わなくても、それでも6歳まで現役を続けてGⅡを勝ち取ったことは素晴らしかったと思う。こういう形もあっていい。
個人的にきっかけは1年前2008年の万葉S出走にあったように思う。後方から何もできずに終わるレースが続いていたテイエムプリキュアだったが、3000mでペースが緩くなったこともあってか久々に先行策。次走の日経新春杯では早め先頭で馬券圏内の3着に好走した。揉まれることなく逃げ先行をすれば走ることもあるようで、秋のアルゼンチン共和国杯でも流れに乗った2番手から4着に頑張っていた。アルゼンチン共和国杯の走りまで考えると、ヒモの1頭としては馬券を買えるべきだったか。
3歳以降の成績は基本的にボロボロで、終わった馬とみなされうるものだったが、レースの条件、作戦を試行錯誤してきたところにも陣営の苦労が感じられる。諦めずにやってきたことが引退レースで結果に結びついて、ストーリー的によかったと思う。
なお、日経新春杯を勝ったことで、テイエムプリキュアは引退を撤回。
せっかく感動的なフィナーレだったのに欲をかいてはロクなことがない、と思っていたわけだが、同年のエリザベス女王杯で大波乱の片棒を担ぐことになる。その話は機会があれば別のときに。