2022アルゼンチン共和国杯 ヒートオンビートの本領発揮なるか?

2022アルゼンチン共和国杯の考察。
東京コースだが3勝クラスのノベンバーSで上がり33秒台前半が複数出るなど馬場状態は引き続き良好な模様。どちらかというと前が残りやすいようである。

テーオーロイヤル
ダイヤモンドSを完勝し、さらにGⅠ天皇賞春でも3着に好走。格上の存在。
前走のオールカマーは5着に終わったが、距離も短く、想定内といえるであろう。2500mへの距離延長はプラスで、ローテーション的にも、このアルゼンチン共和国杯の方が本気度が高いと思える。東京コースもダイヤモンドSに加え、青葉賞でも4着に好走した実績があり、こなすことができる。アルゼンチン共和国杯の東京2500mはシュヴァルグラン、フェイムゲームといったステイヤー色の濃い馬の好走実績もあり、テーオーロイヤルに合うと考えられる。
斤量は前走から増えて57.5kとトップハンデ。プラス材料ばかりではないといったところだが、なんとかなってよい感じだろうか。
他に懸念点があるとするとペース。逃げに拘るほどの馬がいないため、スローも想定される。テーオーロイヤルは先行タイプなので、その場合も位置取り的には有利になると思えるが、この馬の身上であるスタミナを十分に生かせる展開になるかは微妙かもしれない。

キラーアビリティ
ホープフルS覇者の3歳馬だが、今年は皐月賞、ダービーに出走して、ともに好走には至らず。ダービー6着は悪くないが上位馬とは差を感じさせるもの。それでもハンデGⅡアルゼンチン共和国杯なら通用してよいとも思えるが、判断材料が少なく測りづらい面がある。
折り合いに不安があるだけに、現状は小回りコースの方がアテにしやすい印象はある。

ヒートオンビート
前走の新潟記念では5着で、内に進路をとったことも災いしたのかもしれないが、内容的にもイマイチ。ただ、かねてからヒートオンビートには2000mはやや短いのではないかという印象はあった。それまでも着順ほどの価値は与えられない内容ながらも、2000mで馬券圏内入りを続けていたが、前走で途切れたという感じ。距離延長はプラスに働くことが期待できる。
2500mでは目黒記念2着、日経賞3着の実績がある。天皇賞春でも4着と頑張ったが、キングカメハメハ直仔では本質的に長いと思われる。2500m前後が得意なのではないだろうか。前走よりメンバーレベルは上がるが、この距離で本領発揮となるかどうか。
本領発揮に向けて1つ気になるのは前走の新潟記念でサマー2000シリーズのタイトルを獲りに行っていたのではないかという点。新潟記念後のコメントとして、いつもよりテンションが高かったということがあげられていた。それが直接の敗因なのかは分からないが、あるいは新潟記念で目イチに仕上げたことを示唆するものだったのではないかという気もする。アルゼンチン共和国杯において反動がなければよいが。一応期間的には2ヵ月空いているので立て直しはできてよさそうではある。

ハーツイストワール
前走は2600mの札幌日経オープンを勝利。アルゼンチン共和国杯の東京2500mはステイヤー的な資質が求められる舞台でもあるので、それを証明する実績を得られたことはプラスと考えられる。ハーツイストワールは洋芝専用機のようなこともなく、むしろ東京実績の方が豊富。距離、馬場の双方において、こなせるだけの下地があると考えられる。
あとは格の問題。前走は3勝クラスを勝って、その後の天皇賞春では大敗したこの馬が1人気になっていたように、メンバーレベルはあまり高くなかったように思える。3人気のベスビアナイトもオープンでの実績のない馬だった。今回は前走の56kから55kに減るが1kでは強調材料とはしづらい。好走を期待するには、夏からの成長も必要となるかと思われる。

ラストドラフト
しばらく不振が続いていたが、前走のオクトーバーSでは58kを背負いながら2着に好走。振り返れば前々走の目黒記念5着あたりから復調してきていたのかもしれない。
オクトーバーSは頭数の割にメンバーレベルは微妙だったが、ラストドラフトは斤量58kに加え、休養明けでのものなので、まずこの2つの点においてアルゼンチン共和国杯での前進を期待することはできる。
さらに、2年前のアルゼンチン共和国杯での2着などを考えると、ラストドラフトにはオクトーバーSの2000mは短かった可能性もある。すなわち、距離延長もプラスに働くことが期待できる。
前走のパフォーマンス自体は必ずしも高い評価とならなくても、アルゼンチン共和国杯に向けて3つの加点材料を備えることになり、面白さのある1頭と考えられる。ただし、不振期があったように、そもそも安定感は期待できない馬。どの程度の面白さなのかはオッズとの衡量となる。

ブレークアップ
前走で3勝クラスを勝っての参戦。格下という扱いになるが、ハンデ戦ということで斤量は57kから54kに減るため、それによる前進を期待することになる。
ブレークアップにおいて気になるのは、遅めの時計での実績が多い点。3走前は時計が速くなると、露骨に不適応を起こしていた。これは2200mでの出来事であるため、その分、2500mへの距離延長に期待するという考え方もとりうるが、血統的にも軽い馬場自体への適性が低いおそれもある。

 

カントル
1年以上の休養明けとなった前走だが、3勝クラスを勝利。長期休養明けで激走すると反動で次走以降に影を落とすパターンも想定されるが、それほど人気がないのであれば、単純に叩いた上積みで、より高いパフォーマンスを出せることを期待する手はあってよい。ブレークアップと同様に斤量も減る。カントルはワグネリアンの全弟でもあり、実は高いポテンシャルを秘めていて、加点材料を武器に上のクラスにも通用していくという流れもあるのかもしれない。
2500mへの距離適性は未知だが、それ以上に気がかりなのは年齢の割に多頭数でのレース経験があまりに少ないこと。前走にしてもメンバーレベルは3勝クラスとして低くないが頭数は11頭と少なめだった。今回は18頭立ての中枠であり、経験値の欠如が仇にならなければよいが。

アフリカンゴールド
逃げ候補となる1頭。大敗も多く信頼できない馬だが、うまく運んだときは中日新聞杯、京都記念と波乱を演出している。
斤量は京都記念のときが56kだったのに対し、今回のアルゼンチン共和国杯では57kになるので、比較上はマイナスとなるが、メンバー構成的に、スローで逃げたりスムーズに先行したりといったことを想定しうる以上、侮れないものはある。
東京というイメージはないが、最近は出走自体が少ないのが一因で、3年前のアルゼンチン共和国杯では3着に入った実績もある。

キングオブドラゴン
こちらも逃げ候補。逃げたときのラップを考えると、キングオブドラゴンよりアフリカンゴールドが前に行きそうという印象はあるが、キングオブドラゴンが最内枠を引いたことで、思い切って主張していくこともありうる。
重賞での好走実績はなく、特に近2走はパフォーマンスを落としているが、位置取りを味方にできた場合は、斤量減もあり多少の望みはあるか。

ユーキャンスマイル
前走の新潟記念では2着に好走。衰えは否めないが、それでもGⅢなら通用するところを示した。
今回はハンデ戦とはいえGⅡになるため、メンバーレベルは上がるが、一方で2500mへの距離延長となる。過去の実績として、阪神大賞典勝利や、菊花賞や天皇賞春でも上位に顔を出していることを考えると、おそらく2000mより2500mの方が合っているのではないだろうか。格が上がるのを距離適性の高さで相殺できるかという構図となる。
ただし、2年前のアルゼンチン共和国杯では4着止まり。ユーキャンスマイルの衰え開始を感じさせられたレースでもあった。当時は58kの斤量に休養明け。この点は今回の方が状況がよいといえるが、能力的には当時より下がっていると見込まれ補えるかどうか。

ディアマンミノル
前年のアルゼンチン共和国杯5着、今年の目黒記念4着と、ともに上がり最速の脚で掲示板入り。特に目黒記念では大外からよく伸びて勝ち馬ボッケリーニに0.1秒差まで詰めており、ちょっとしたことで勝ちまで届いてもよさそうな内容だった。
とはいえ、こうした脚質だけあって、基本的には安定感がない。いつも怖さはあるが、結局は滅多に馬券にならないといった感じ。もっとも、その分人気はないので、安定感のなさには目を瞑ることはできるかもしれない。
現状は割と前が残りやすい馬場で、スローペースもありうることから、積極的にディアマンミノルを推す理由はあげづらいが、やはり怖さはある。

マイネルファンロン
今年はAJCCで2着に好走すると、GⅠ戦線でも天皇賞春6着、宝塚記念5着と密かに頑張っている。前走の京都大賞典はシンガリ負けだったが、マイネルファンロンも安定感のない馬で、その一環とも考えられる。年齢的に衰えも危惧されるが現時点では確定できない。人気がなければあまり気にしなくてよいところで、能力的にはここで足りるパフォーマンスを示しているので面白さはある。
AJCC、天皇賞春、宝塚記念と、道中で位置を押し上げており、イメージ的には小回りの方が向きそう。実際に東京実績は低い。そのためアルゼンチン共和国杯では狙いを下げると言いたくもなるが、一方で新潟記念でそうしたこの馬への印象を全て覆してしまったこともあり不気味さはある。