2022天皇賞秋 有力3歳勢の採るニューノーマルローテ。

2022天皇賞秋の考察。
今年のメンバーの特徴としては、クラシックで活躍した3歳馬が3頭も出走してくるということ。イクイノックス、ダノンベルーガ、ジオグリフ。それぞれ上位人気に推されている。加えて、この3頭はいずれもダービーからの直行での参戦ということ。前年の天皇賞秋においてエフフォーリアが成功したローテーションだが以前にはなかったもの。今年の結果次第でニューノーマルとなってくるかもしれない。
古馬との初対戦も通用するか不透明だが、揃って休養明けということで予想を難しくする要因となる。

シャフリヤール
有力3歳勢を迎え撃つ前年ダービー馬。3歳馬との力関係は分からないが、世代間レベルの話を抜きにすれば、4歳はキャリアの中で充実期であり、基本的にはこちらの方が優勢になってよい。
ただし、シャフリヤールと同世代のエフフォーリアは4歳になって調子を崩してしまったし、やっと引退、種牡馬入りとなったマカヒキにしても、4歳時は一歩足りない成績に留まっている。基本的には有力も、やはり個体の状態によって結果は変わってくる。
シャフリヤールは今年2戦は海外でのレースで、国内での出走は実に前年のジャパンカップ以来となる。一応海外での結果は理に適ったものとなっているが、やはり状態面を測りづらいものはある。日本の芝への慣れという面でも多少の不安はあるか。
適性的にはダービーが最大実績だが、1.43.9で決まった毎日杯も制しており、瞬発戦だけでなく、トータルのスピード勝負となっても適応できる下地はありそう。

ジャックドール
前走の札幌記念では、これまでの逃げとは異なる位置取り、時計のかかる馬場と、マイナスとなりうる要素があったが勝利。脚質、適性の幅を示す結果となり、収穫の多い勝利だったと思われる。
今回もパンサラッサ、さらにはバビットがいるため、位置取り面で前走より恵まれるということにはならないが、無理に対抗する必要がないことでレースを組み立てやすいと思われる。うまくいけば3番手あたりで逃げているような形になれるかもしれない。
瞬発力勝負のイメージはないが、全体時計に関しては金鯱賞1.57.2と速い時計で勝っている。パンサラッサらにより全体時計が速くなっても対応できる適性はある。
有力馬では3歳勢に加え、4歳シャフリヤールも休養明けだが、ジャックドールは札幌記念を使っており、臨戦過程には相対的に好感がもてる。

イクイノックス
皐月賞、ダービーでともに2着に好走。3歳世代を代表する1頭。
古馬との世代間比較は難しいが、過去の天皇賞秋の事例からすれば、これくらいの実績のある3歳馬であれば通用してよいと思われる。
ローテーションは休養明けとなるが、イクイノックスは皐月賞において、今回よりも異例のローテーションで臨みながら好走しており、あまり気にしなくてよいと考えられる。
ただ、体質面に弱点を抱えているとのことで、どことなく不安はつきまとう。休養明けであることよりも休養明けとなる理由が問題。ダービー時には血統的観点からこの馬の安定感を不安視したと思うが結果的に2着に好走し的外れな指摘だった。体質面の弱点に伴う安定感の問題も別で想定できそうだが、これも杞憂だろうか。

ダノンベルーガ
皐月賞、ダービーともに4着。好走はしているが、ともに2着だったイクイノックスに比べると実績面で劣る。
とはいえ皐月賞は内が伸びづらい中で最内枠を引いてしまい仕方なかったといえる。
一方、ダービーでは伸び負けした感はある。鋭く伸びてきたがアスクビクターモアに並びかけるあたりで脚色が鈍ってしまった感じ。これを実力と捉えるか適性と捉えるか。
適性と考えると、2400mが微妙に長かった可能性が考えられる。とすると、2000mへの距離短縮がプラスとして働きうるが、休養明け面でスタミナの不安も感じさせることになる。
あるいはダービーの勝ち時計が2.21.9と速く追走に苦労したという可能性も考えられる。とすると、今回瞬発力を生かせる展開となればよいが、レースが流れた場合に厳しくなってくることも考えられる。
そうはいってもダービーでは好走しているため、大きなマイナスとすべき点ではないかもしれないが、多少パフォーマンスを落とす要因を抱えているおそれはある。

ジオグリフ
今年の皐月賞を制した3歳馬。皐月賞は少し時計のかかる馬場で外から差したもので、馬場の恩恵はあったように思える。
そのため東京の軽い馬場に対応できるかが課題となる。共同通信杯の内容から、このメンバーが相手となると、瞬発力勝負では分が悪い。その点ではパンサラッサ、バビットがレースを引っ張りそうな展開はジオグリフにとって好都合かもしれない。
ただ、レースが流れた場合、今度は全体時計が求められうる。7着だったダービーは距離の問題もあったかもしれないし、朝日杯FSでも一応上がり最速を使っているため、速い時計に対応できないとは限らないが、ジオグリフのイメージ的にはどうかというところはある。

 

マリアエレーナ
前走の小倉記念を圧勝して天皇賞秋に挑戦してきた。前々走のマーメイドSを基準にすると飛躍的に実力を上げてきた感もある。
最内枠で牝馬というとヘヴンリーロマンスが思い出されるが、小倉記念勝利という点ではスウィフトカレントの方が近いかもしれない。
小倉記念圧勝とはいえ天皇賞秋レベルに向けては依然としてマリアエレーナは実績不足とは思うが、スウィフトカレントは小倉記念の勝ち方はマリアエレーナのようなものではなかったし、その後のオールカマーも着差なしとはいえ4着。小倉記念から天皇賞秋の間が空欄となっているマリアエレーナの方が未知の魅力を感じさせる。4歳ということで、この期間中に目に見えない成長があることも期待できる。
ただし、スウィフトカレントが2着に入ったときは、5歳になったスイープトウショウ、コスモバルクが人気になっていたように、今年ほど層が厚くなかったように思える。東京適性不明も、前走の充実度からマリアエレーナは楽しみのある1頭ではあるが、自身で勝利をもぎ取るというよりは有力馬の凡走待ちのような側面はあるかもしれない。

パンサラッサ
国内GⅠでは結果が出ていないが今回は得意距離の2000m。2500mの有馬記念、2200mの宝塚記念より期待しやすい要素はある。イメージ的には小回りだが、天皇賞秋と同じ舞台のオクトーバーS逃げ切り勝ちもあり侮れないところはある。
気がかりなのはここ2戦スタートがよくない点。前走の札幌記念は同じ厩舎のユニコーンライオンのアシストがあって自分の形に持ち込むことができたが、それがなかったら無理に先頭を奪取する負荷が大きくなっていたかもしれない。ジャックドールに最後まで抵抗していたように必ずしも気力が萎えたわけではなさそうだが、スタートに関してはズブさのようなものが感じられる。今回においても順調に形を作れるかの不安があるし、次の1年は年間ベースでは厳しくなってくるかもしれない。

ユーバーレーベン
秋華賞、前走の札幌記念が二桁着順で、近走不振のようなイメージがあるが、前々走は海外で参考度が低いとはいえ5着。このとき勝ったシャフリヤールとの着差を考えると、天皇賞秋のオッズでずいぶん開きが出たという印象を受ける。
とはいえ前々走は2400m。2400mなら人気がなければ安定感の低さに目を瞑るといった運用もあってよいが、2000mでまして時計勝負になるようだとやはり難しそうか。