2022宝塚記念 格下馬に席は空くか?

2022宝塚記念の考察。
例年は開催8日目に行われるが、昨年に引き続き今年も4日目。雨も降らない予定で宝塚記念としては馬場状態がよい中での開催となる。
海外も含めGⅠ好走馬が多く参戦する豪華メンバーだが、それぞれ不安もある。GⅡ級の馬に席が空くかどうか。

エフフォーリア
昨年の年度代表馬で、4歳となった今年も活躍が期待されたが、その初戦となった前走の大阪杯でまさかの9着。いいところがなかった。明確な理由は不明だが、輸送に伴う調整の不具合があった模様。
宝塚記念も大阪杯と同じく関西への輸送が必要となるため、同じ問題が繰り返されないかは気がかりなところ。これに関しては陣営も対策をしてくると思うので、過度に気にしなくてよいという考え方もとりうる。
一方、それ以上に気になったのは今回の宝塚記念に向けた調整過程。調教でブリンカーを装着しており、さらにはズブさが出てきたとのコメントも出ている。相当気合を入れないと仕上げられないとも受け取れる。馬から走りたくないというサインが出ているのではないだろうか。ズブさの代名詞ともいえる馬がゴールドシップだが、3歳時は順調に活躍したものの4歳秋からは気性の問題が表面化し成績の安定感もなくなった。エフフォーリアにおいても、能力は依然としてあるはずなので、目の前の宝塚記念で強さを発揮して何ら不思議はないが、今年1年この馬を中心に回っていくであろうという展望に関しては黄信号が灯ったかもしれない。

タイトルホルダー
前走の天皇賞春ではスタミナ勝負の流れに持ち込み7馬身差の圧勝。他の馬は追おうにも逆に突き放されてしまった。
長距離での強さを見せつけた格好だが、タイトルホルダーのラップには特徴がある。すなわち、序盤は60.5とそれなりのペースで入っていくが、中盤で緩めて、また終盤で加速するといった配分となっている。マキバオーのアマゴワクチンを思わせるようなペースのマジシャンぶりだが、3200mの距離だからこそ遂行できた部分もあるのではないか。タイトルホルダーは皐月賞2着好走などの実績もあることから、2200mへの適応力も見込まれるが、条件的には前走の方が向いていたのではないかと思われる。前走が圧勝だけに、そこからパフォーマンスを落としても馬券圏内に入れてよいが。
なお、タイトルホルダーには展開面の問題も付きまとう。逃げがベストだが、今回はパンサラッサが出走するため、番手でのレースとなる見込み。有馬記念のときのように単独2番手に収まれればよいが、実績的にもマークを受けうる存在。揉まれないかに一抹の不安は残る。

ディープボンド
GⅠ実績十分な1頭で、前年は天皇賞春2着、有馬記念2着。前走の天皇賞春ではタイトルホルダーにこそ完敗したが2着は確保した。
ただ、実績的に最大目標はおそらく天皇賞春だったのではないかと思われる。タフなレースでもあったので、余力があるかが問題となる。
2200mは京都新聞杯勝利もあり、こなせる下地はあるが、ステイヤー仕様になっていると感じられ、今なら時計がかかった方がディープボンドは対応しやすいと思われる。日本における道悪での強さは折り紙付きのため、距離的な負担を増す意味でも雨が降った方が有利だったと思うが、その期待の薄そうな天候なのがどうか。

デアリングタクト
長期休養からの復帰戦となった前走のヴィクトリアマイルでは6着。決して悪い内容ではなく、ある程度走れそうなことが確認できたことはよかった。
宝塚記念は条件的にはおそらくヴィクトリアマイルより合う。当然叩いた上積みも期待されるが、再びGⅠで勝ち負けできるまで状態が戻っているといえるのかが問題となる。GⅡや牝馬限定GⅠなら通用しても、頂点レベルまでは無理というパターンもありうる。
3歳のクラシックで十分な結果を出しながら、4歳シーズンをほとんど棒に振り、5歳で戻ってきたという事例はあまりなさそうだが、しいてあげればキズナ、ウインバリアシオン、ドリームパスポート、チェッキーノあたりが近いだろうか。この中ではウインバリアシオンが再びGⅠでの好走を見せている。デアリングタクトもレースで使い減りしなかった分、5歳でも能力を維持しているということも案外あるかもしれない。もっとも、ここで結果を出したとしても、今度はいつまでもつかという問題が生じうる。

パンサラッサ
大逃げが印象的な馬で、何かと比較されるサイレンススズカが勝った宝塚記念をパンサラッサも勝てるかどうか。2頭を重ね合わせるファンもいるであろう。
適性面を考えると、サイレンススズカは確かに宝塚記念を勝ったが、本質的な適性は時計の出る1800m、2000mにあったと感じられる。2200mの宝塚記念を勝ったし、あるいは2400mでもGⅠを勝つことくらいはできたかもしれないが、歴史に残るレベルの圧倒的なパフォーマンスは1800mや2000mでこそではないだろうか。パンサラッサはラップの割にあそこまでのスピード感はなく、少しタイプが異なるのではないかと思っているが、距離適性に関しては近い。1800mや2000mで高いパフォーマンスを見せているが、やはり2200mまでスピードを持続できるかが課題となるであろう。
ただ、前走のドバイターフでは、この馬のイメージを覆す、やや溜め逃げの形で勝利。ひたすら飛ばしていくスタイルからの脱却が叶えば、2200mを克服する可能性も見えてくる。パンサラッサが逃げて差すを体得する日は来るだろうか。

 

オーソリティ
前年のジャパンカップで2着。3月のドバイシーマクラシックでも3着に好走。GⅠで通用する能力を身につけてきた。
気になるのはコース適性。オーソリティの実績のほとんどが左回り。意図的に左回りを選んで出走しているようにも見える。右回りで失態があったなどではなく、阪神2200mをこなせるかどうかは不透明だが、これまでの実績のイメージからはズレがあるようにも思える。

ポタジェ
本質的にGⅡレベルの馬だと思っていたが、前走の大阪杯では勝利。重賞初制覇がGⅠとなったわけだが、勝ち切るに至ったのは驚いた。
とはいえ、ポタジェが完全にGⅠ級の馬に成長したかといえば、必ずしもそうではないように思える。大阪杯ではバリバリのGⅠ級はエフフォーリアくらいで、そのエフフォーリアが不発に終わったことで、ポタジェやレイパパレ、さらにはアリーヴォにもチャンスが巡ってきたということではないかと考えられる。
今回も自力で勝てる可能性は高くなさそうだが、実績上位馬も不安点を指摘できるだけに、堅実さを売りにするポタジェがまた馬券圏内に入ってきても不思議ではない。ただし、2200mよりは前走の2000mの方が若干合っていそうではある。

アリーヴォ
前走の大阪杯では3着に好走。小倉専用機ではなかった。
この馬も基本的にはポタジェと似た立ち位置だが、4歳の成長力には期待できてよい。
距離の2200mは未知で、どちらかというとプラスには働かないのではないかと思えるが、不確定要素でなんともいえない。距離をこなせれば状況次第でチャンスがあってもよく、馬場が軽くなることで適応できる可能性が増す。

ヒシイグアス
前走の大阪杯では4着。前年の天皇賞秋に続くGⅠでの掲示板入りとなった。
予定変更での参戦となった大阪杯に比べて、今回の宝塚記念の方が順調なローテーション。前走からの上積みが期待される。
ヒシイグアスは1800mと2000mの経験しかなく距離の2200mは未知。

キングオブコージ
前々走にて2200mのAJCCを勝利。前走の大阪杯は11着に終わったが、2000mで流れに乗れなかったところがあったのかもしれない。
ロードカナロア産駒ながらキングオブコージは2200m以上に適性があると思われ、前走からの距離延長はプラスに働いてよいであろう。馬場的にはもう少し時計のかかる状態の方が都合がよかったかもしれない。
GⅡ2勝はともに後方から差してきたものであり、今回は人気もないので、ポツンではないが後方から無欲で一発を狙ってきた場合に怖さが生じる。この馬もGⅠの役者とは言い難いため、実績上位馬がベストのパフォーマンスを出せないような事態になった場合にチャンスが生じる1頭である。後方に構えるのを前提とすれば、加えて展開面で前が崩れるのが望ましいが、逃げ馬パンサラッサをタイトルホルダーが早めに捕まえに行くような前傾の展開となれば雪崩現象が起きる期待も少しはあるか。

ウインマリリン
GⅡ3勝の実績馬。特に前年のオールカマーの勝ち方はよかったと思われる。
しかし近2走は芳しくなく、前走の大阪杯でも最下位に終わってしまった。状態面の問題が原因と思われる。一過性なのか慢性的なのかは分からないが、ウインマリリンは過去に秋華賞15着大敗から次走のエリザベス女王杯で4着に巻き返すといったことをしており、直近の成績が悪いだけでは見限れないところがある。
日経賞、オールカマー勝利という実績から、大阪杯の2000mから2200mへの距離延長はプラスに働く期待がある。まずは状態面の問題が先決ではあるが。
展開面に関しては、ウインマリリンは位置取りの融通性はありそうだが、基本的には先行タイプと思われる。パンサラッサ、タイトルホルダーと後続との位置関係がどうなるかだが、位置取りによってはこれらに翻弄されるおそれもあり、展開を味方につけられるかは鞍上の腕も関わってきそう。

マイネルファンロン
前々走ではAJCCで2着に好走。一時期は頭打ちの感さえあったが、距離延長がよかったのかGⅡでまで好走することができた。
安定感は期待できないが、マイネルファンロンもキングオブコージと同じように無欲で乗るのがよいのではないか。AJCCでも連を組んだキングオブコージが好走する流れになった場合は案外マイネルファンロンもそれなりのところに浮上しているかもしれない。
新潟記念で新たな面を引き出したMデムーロ騎手への乗り替わりはプラス。またステイゴールド産駒は宝塚記念で良績がある。