2022皐月賞の考察。
土曜日は重→稍重での開催。後半のレースでは逃げ馬が直線で外に持ち出すなど、外差し馬場の傾向が見られた。日曜日はおそらく良馬場に回復すると思われるが、時計とトラックバイアスもあわせて気にしたいところ。1週前の時点では、春雷Sで1.06.8という時計が出ており、馬場は相当よかった。どのレベルまで回復するか。
イクイノックス
ここまで2戦2勝。前走の東京スポーツ杯2歳Sでは上がり32.9の脚を使い2着に0.4秒差の勝利。スローペースでほぼ直線だけのレースだった中で、これだけの差をつけるのは非凡なものを感じさせる。上がりを見ても、2位のアサヒが33.5だったことから、イクイノックスがいかに切れたかが分かる。同レースに出走していた他のメンバーのその後が冴えないのは微妙だが、余裕のある勝ち方だったことも含めて、イクイノックスには底を見せていない魅力がある。
一方、ローテーションに関しては一抹の不安がある。陣営の意図によるもので、順調さを欠いたというものではないようだが、それでも東京スポーツ杯2歳Sからの直行は異例。確かに近年は直行がトレンドになっているが、サートゥルナーリア、コントレイルはホープフルSからの参戦だった。
また、適性面においても、これまでの2戦は新潟と東京。いずれも左回りであると同時にスローからの瞬発力重視のレースだった。今回の皐月賞では先行馬が多い割に、前に拘る馬は少なく、意外とスローになる可能性もあるが、そこそこ流れた場合に、これまでと同様のパフォーマンスを発揮できるかは未知である。もっとも、類似の指摘はイスラボニータのときもドゥラメンテのときも当て嵌まったが、両頭は勝利を収めている。イクイノックスも克服できて全然よいが、人気馬として不安要素を抱えている部分はある。
ダノンベルーガ
こちらも2戦2勝の無敗馬で底を見せていない魅力がある。前走の共同通信杯では上がり最速で余裕のある勝ち方をしており、メンバーレベルが上がっても期待できる内容であった。
ダノンベルーガも適性面においてイクイノックスと同様の不安があげられる。すなわち、2戦とも左回りの東京で、かつ、瞬発力重視のレースだった。異なるペースとなったときに対応できるかは未知。
また、これまでの2戦では出走頭数が8頭、11頭と少なめ。その中で結果を出してきた馬であり、今回の皐月賞では18頭立ての中で最内枠となった。スローペースになったとしても、今度は馬群をうまく捌けるかという問題が生じうる。
ドウデュース
3戦3勝で朝日杯FSを制覇。前走の弥生賞では初黒星となったが2着と好走し一応の格好はつけた。
ただ、弥生賞はしいて言えばこの馬が最も強い内容だったかという感じはあるものの、他馬と比較して明確な優位性は見られない。そのあたりがどうか。仮に2000mの距離がやや長くて、詰め切れないところがあったのだとすれば、馬場の回復具合がドウデュースの結果に影響を与えることになりそう。
キラーアビリティ
ホープフルSの覇者で、そこから直行での皐月賞参戦となる。
ホープフルSでは、一貫ペースを先行した上での正攻法の勝利であり好内容だったと思われる。前々走の萩Sの内容はやや微妙だったが、勝ち馬のダノンスコーピオンが朝日杯FSで3着に好走し、ちょうど前日のアーリントンCを制したことはマイナスを軽減する材料となる。
言うまでもなく皐月賞はホープフルSと同舞台であり、能力面、適性面の両方において、キラーアビリティは皐月賞で期待できる1頭である。
ローテーションに関してはどうか。近年の傾向から間が空いていることを過度に気にする必要はないが、過去の成功例であるサートゥルナーリア、コントレイルと比較して検討しておきたい。サートゥルナーリアは萩Sにおいてそれ以上の休養明けをこなした実績が既にあった。コントレイルには休養明け実績はなかったが、あの時点で同世代では抜けた能力の持ち主だった。対して、キラーアビリティは新馬戦で5着に留まっている。従って、過去の成功例と比較すると期待度は下がりそうではある。とはいえ、両頭ほど人気があるわけではないので、そこも含めて検討する必要がある。
ジオグリフ
札幌2歳Sでは強い内容だったが、続く朝日杯FSでは5着まで。前走の共同通信杯では着順は2着と好走したが、ダノンベルーガに一蹴されてしまったような印象がある。札幌2歳Sの出走馬はその後目立った結果を残せておらず、振り返るとレースレベルがそれほどでなくジオグリフが強く見えたという解釈もとりうる。
一方、朝日杯FSは1600mで、共同通信杯もワンターンの1800m。仮にジオグリフが札幌2歳Sのようなコーナー4回のコースの方に適性があるとすると、皐月賞の中山2000mはプラスに働く期待もできる。共同通信杯に関しても、ダノンベルーガ以外には十分に優位性があるという点を重視すれば、適性による浮上も想定できる。
デシエルト
デビュー2戦はダートを使っていたが、前走の若葉Sで初めて芝に挑戦すると、逃げを打ち、後続に0.5秒差をつけて勝利。降した中には重賞で健闘している馬もおり、デシエルトは皐月賞においても侮れない。若葉S勝利から皐月賞で好走した馬として、ヴィクトリー、ワールドエース、ヴェロックスがあげられ、レースの格付けの割には皐月賞への関連性がある。
デシエルトにおいて気になる点として次の2点が考えられる。
1つ目は逃げで結果を出しており逃げ候補の1頭でもある。もし再度逃げを打とうとするなら、同型のビーアストニッシドの存在、内の方のアスクビクターモア、グランドラインなどの先行馬の出方も気になるところとなる。
2つ目は馬場の問題。若葉Sは稍重での開催であり、勝ち時計も2.00.2と速くはなかった。これがダート出身のデシエルトに味方した可能性もある。皐月賞で馬場が回復し、時計が出るようになった場合に適応できるかは未知である。ただ、これに関しては上がりが速くなって逃げた馬に有利に働く可能性もある。
オニャンコポン
ホープフルSでは11着に大敗したが、前走の京成杯では巻き返して勝利。ホープフルSでは先行して垂れたが、京成杯では差しに回っており、脚質転換がうまくいったのかもしれない。京成杯では外差し馬場を生かしたような印象もあり、ホープフルSで通用しなかった馬が新しい脚質を得て皐月賞で反撃なるか試金石の一戦となる。
ローテーション的には少し間が空いた感があるが、オニャンコポンの父エイシンフラッシュが同ローテーションで皐月賞3着に入っている。ちなみに母父ヴィクトワールピサがこのときの勝ち馬であり、オニャンコポンは皐月賞に縁のある血統でもある。
アスクビクターモア
前走の弥生賞を勝利し、これで中山は3戦3勝。コース巧者といってよい。
弥生賞はスローペースを先行し、展開に恵まれたところもあったが、そうはいっても上がりはドウデュースらに0.2秒劣るだけであり、他の好走馬と比較して特に見劣りするわけではない。
皐月賞では先行馬が複数いるが、アスクビクターモアがその中では最も内枠を引いた。馬場が回復して内が有利になるようであれば、デシエルト、ビーアストニッシドが前に行って、そこから少し離れた絶好位を追走するという理想的な形になれる可能性もある。アスクビクターモア自身、速い時計がなく、馬場が回復することがプラスに働くとばかりはいえないが、展開の恩恵を受ける可能性も秘めており注意は必要と思われる。
ジャスティンロック
京都2歳Sではスローペースの中、後方から4角で先行勢に取りつく小回りコース向きの機動力を見せた。
前走の弥生賞では4着。2着ドウデュースより能力的に見劣るという印象はあるが、大きな差でもなさそうなのは前述の通りである。人気によっては面白さのある1頭になりうる。
また、弥生賞においてはジャスティンロックは京都2歳S以来の休養明けでもあり、馬体重も10k増えていた。皐月賞において叩いた上積みがあれば、差も縮まることが期待できる。
ボーンディスウェイ
ホープフルS5着、弥生賞3着と、それなりの結果を残している。ホープフルSではキラーアビリティ、弥生賞ではドウデュースに若干分が悪いが、逆転不能と断定できるほどでもない。ボーンディスウェイは先行馬で、アスクビクターモアとともに展開次第では望ましい位置をとれる可能性が期待できる。
ボーンディスウェイのここのところ4戦は全て中山2000m。皐月賞に向けて意欲が高そうにも見えるが、この経験が大舞台で実を結ぶか。
ジャスティンパレス
ホープフルS2着。そこから皐月賞への直行となる。ホープフルSの内容、及び、ローテーションの面から、キラーアビリティを逆転できるという論拠は見つけづらいが、着差を考えると、キラーアビリティを評価するならジャスティンパレスも全くの無視はしづらいという感じか。