2021有馬記念の考察。
福島記念をハイラップで逃げ切ったパンサラッサが逃げ宣言。前走のテン33.6を考えたら、この馬に絡んでいく馬はおそらくいないと思われるが、それでも複数の展開が考えられる。
① パンサラッサはハイラップで逃げるが2番手以降は大きく離れてスローとなる。
② パンサラッサがハイラップで逃げて2番手以降もそれなりに追いかける、または早めに捕まえに行って上がりがかかる。
③ 2500mの距離を意識してパンサラッサがペースを落とす。
各馬を検討するにあたり、複数のパターンが想定されることを頭に留めておきたい。
エフフォーリア
今年の皐月賞馬で前走は天皇賞秋を勝利。強いとされる3歳馬の代表格にあたる。中山コースは皐月賞でこなしており、コースは不問という感じ。能力的には十分に通用するものをもっている。
気になるのは距離経験。キャリア6戦のうち4戦が2000mで、それより長いのはダービーのみ。ダービーも2着なので、確かに2400mをこなしているが、このときはスローペースで上がり比べの様相だった。2000mにおいてはタフな展開でも強いことを皐月賞で証明しているが、2500mでも同様にこなせるのか。すなわち、展開パターンのうち①と③になればよいが、仮に②となった場合に不確定要素ながら一抹の不安はある。
クロノジェネシス
グランプリを3連覇しており、こなせる条件の範囲も広い。①②③のどの展開になっても対応する適性がある。位置取りにも幅があり、ルメール騎手なら適切な位置でレースをしてくれそう。
気になるのは陣営のトーンで、物足りないとの弱気のコメントが出ている。凱旋門賞の疲れが抜けていないのかもしれない。陣営のコメントに反する結果となった事例はいくらでもあり、過度に気にするべきことでもないかもしれないが、クロノジェネシスは早い時期から活躍している5歳馬。どの時期までいい状態を維持できるかが課題となる。調教での物足りなさが衰えによるものでなければよいが。
タイトルホルダー
前走の菊花賞は0.8秒差の圧勝。より強いメンバーが相手になっても期待できるレースぶりだった。
ただ、この馬は逃げることでより高い能力を発揮するところがありそう。菊花賞でも弥生賞でも逃げ切って勝利。2着だった皐月賞でも3角で先頭に立っている。その面では大外枠を引いてしまったのはマイナス。肯定的に捉えるなら包まれるリスクが小さくなったというところだろうか。
今回はパンサラッサがいるので、タイトルホルダーが逃げる可能性は低く、先行グループに収まると思われる。①となった場合、離れた2番手で逃げているのと同じ形となれば期待できる。②となっても粘り強さを備えているため健闘できるかもしれないが、差し馬勢に飲み込まれるおそれも。例えばキセキあたりが早めに捲ってきた場合、タイトルホルダーには厳しくなるか。③となった場合は窮屈なレースとなり、セントライト記念のように能力を発揮できない不安がある。
ステラヴェローチェ
3歳で上位の1頭だが、エフフォーリアらに比べるとインパクトで劣る。地力で勝ち切るのは難しいかもしれない。とはいえ、前述のようにエフフォーリアらにも不安要素が想定できることから、これらが不発に終わった場合に、相対的にステラヴェローチェが着順を上げてくることはありうる。
過去の事例ではブラストワンピースもクラシックでは上位に入るに過ぎなかったが、その年の有馬記念を勝利。それを考えるとステラヴェローチェも侮れない。とはいえ、ブラストワンピースもその後は尻すぼみな戦績となっており、実力以上に好走してしまった反動が出た可能性もある。
ディープボンド
前走の凱旋門賞では大敗してしまったが、馬場の全く異なる海外での出来事なので、能力面に関してはこれをもって評価を落とす必要はない。
問題はクロノジェネシスと同様で凱旋門賞の疲れが抜けているかどうか。正直分からないところだが、クロノジェネシスほど人気はないので、あえて気にしない手はある。
日本での成績は4歳になって躍進してきた感じ。阪神大賞典で圧勝。天皇賞春でも2着に入っている。切れ味に欠けるが粘り強さがあり、展開は①②③いずれになっても対応できてよい。①③で極端なスローとなると切れないだけに不安が生じるが、先行力もあるので、そのときにいい位置取りが叶っていれば克服できる期待はある。楽しみのある1頭。
あとは中山コースへの適性がどうかという点。中山はこれまで2戦着外。皐月賞のときは18人気10着なので問題ないが、引っかかるのは今年の中山金杯14着。敗因としてあげられていたように確かに位置取りもよくなかったが、それにしてもいいところなしだった。2000mの距離が短かったという解釈もありうるが、ディープボンドの走破時計は2.02.0。忙しすぎたという言い訳をするには時計が遅すぎる。思えば結果ステイヤーだったマイネルキッツなんかも、ある程度2000mもこなしていた。明確な原因は不明で、中山コースが合わないのか、意外とムラなところがあるのか、寒い時期は動きが悪いのか。いずれだったとしても有馬記念において不安要素となる。時系列的に充実期に入る前の話だったとして、近走重視の観点からスルーしてしまってよいかどうか。
アカイイト
前走のエリザベス女王杯では伏兵の立場だったが、これを覆して勝利。確かに展開に恵まれたところはあるが、2着に0.3秒差をつけており、展開に恵まれただけでなく地力強化が為されていたと思われる。有馬記念においても②の展開にでもなれば、再度の好走もあるかもしれない。
とはいえ、エリザベス女王杯に比べてメンバーが強化されることから、仮に展開に恵まれたとしても必ずしも通用するとはいえない。
過去の事例としてはマリアライト、サラキアがエリザベス女王杯好走から続く有馬記念でも好走している。サラキアは有馬記念がラストランとなったので分からないが、マリアライトは翌年の宝塚記念を制しており、有馬記念時点でもさらなる地力強化途上だったのかもしれない。そこでアカイイトに同様の期待ができるかが問題となる。アカイイトは当時のマリアライトと同じ4歳だが、消化レース数が多く、着実にステージを上がってきている感では劣る。その点で、あまり期待しすぎるのもどうかというところはあるが、それでも侮れない馬といえる。
アリストテレス
前年の菊花賞ではコントレイルと接戦を演じており、3着サトノフラッグには0.6秒差をつけている。ポテンシャルは高いはず。
しかし、近走のパフォーマンスからはGⅠで期待するのは難しい状態となっている。菊花賞で激走しすぎたか。前走のジャパンカップではラップ的には見所なく9着に終わっているが、途中まで先頭に立って逃げる積極的なレース運び。これが馬に活性化効果を与えるようなことがあれば、4歳の本来の充実を示す可能性も少しはあるだろうか。
パンサラッサ
この馬の出方でレースが変わる鍵を握る馬。
前走の福島記念は驚きの強さ。1000m通過57.3はサイレンススズカを思い出させる。レースの見た目からこの馬も距離の限界があると思われ、2500mは長いのではないかと考えられる。一方、前々走のオクトーバーSの勝ち時計は2.00.0、前走の福島記念にしても1.59.2で、それほど速いわけではなく、ひたすら快速というタイプでもないのかもしれない。もし③のようにスタミナを極力温存するレースをしても能力を発揮できるのであれば、数値からは2500mへの距離延長がプラスに働く可能性も否定はできないが。
アサマノイタズラ
セントライト記念勝ちの3歳馬。スプリングS2着もあり中山は得意そうだが、成績が安定しない。②の展開になった場合に、後方からの決め打ちが嵌るのが少し怖いが、クラシックでは皐月賞16着、菊花賞9着。さすがに実績不足という感じはする。
シャドウディーヴァ
府中牝馬Sを勝った後、通常は輸送があってもエリザベス女王杯に向かうと思われたところ、ジャパンカップ、有馬記念と王道路線にぶつけてきた。実績的には現状足りない馬だが、あえてこうしたローテーションをとっているのは陣営として期待がもてる要素があるのかもしれない。ただ、実際にジャパンカップでも通用するには至っていないことから、やはり期待は薄そうか。